文具

はじめての高級ボールペンは、クロスのATXでした

誰にでも「最初の一歩」があります。

私にとって、ボールペンの始まりはクロスATXでした。

今から20年近くも前のことです。あの頃は、まさか自分が筆記具や手帳の達人になってしまうとは、全く予想していなかったです。

(ま、昔から凝り性だったことは認めます)

それにしてもATXは人気があるようですね。先日も定年を迎えた方への記念品が、ATXだったことには驚きました。

今回はクロスの中でも定番商品といえる、ATXの魅力を紹介させて頂くことにします。

ATXの歴史

クロスの歴史は古いです。筆記具として不動の地位を確立したのは、第二次世界大戦後の1946年に登場したセンチュリーシリーズとなります。当時は繰り出し式のペンシルだけで、ボールペンが登場したのは1953年となります。

[クロス・ジャパン]クロス170年の変遷をたどる

現在ではクラシックセンチュリーと呼ばれている筆記具です。冒頭画像にATXと一緒に写っていますが、鉛筆のように細いボールペンです。

今でも高齢者の場合、クロスというとクラシックセンチュリーを思い浮かべる人が多いです。20世紀後半はクラシックセンチュリーだけで勝負して来たとも言えます。

そんなクロスですが、1990年代に入るとタウンゼントを製品化します。そして2000年頃には、下記画像に写っているアポジーとATXを製品化しました。

つまり今回紹介しているATXですが、実はまだ20歳前の若者なのです。私が購入した時期も、登場したばかりの頃だったようです。

ご覧いただくとお分かりのように、アポジーもATXも太めのボディ(本体軸)です。この頃はドクターグリップなど、太めの筆記具が流行していました。

[パイロット] ドクターグリップの歴史

モンブランでは2000年にボエム、そして2003年にスターウォーカーが販売開始されました。いずれも太めの軸です。今では “趣味の文具箱” さんによる「世界のペンブランド」という書籍で紹介されているように、さまざまな太軸ボールペンが存在します。

趣味の文具箱:ブランドの歴史

この頃は人間工学という流行語が登場し、モンブランのスターウォーカーなども人間工学に基づいて開発されたと謳われていました。インターネットとパソコンが普及した時期のせいか、筆記量の少ない若者を中心に太軸が人気となりました。

私はそんなに若くありませんでしたが、ATXやスターウォーカーを購入しました。

ATXの良さ

鉛筆は良いです。シンプルで、あまり紙質が書き味に影響しません。今でも米国の映画やTVドラマでは、大人が鉛筆を使っている光景を見かけます。

私も鉛筆は苦手ではありません。しかし父親の持っていたクロスのクラシックセンチュリーは、今一つ使い勝手が良くありませんでした。(細軸な上にクロームという滑りやすい金属なので、当然といえば当然です)

そんな私も歳を取り、仕事で顧客先を訪問する機会も多くなりました。私は万年筆も使えましたが、打ち合わせでは説明者になることも多かったです。キャップを外したまま放置すると宜しくない万年筆では不便でした。

そんな私が選んだのが、クロスのATXでした。どうしてATXに辿り着いたのかは覚えていませんが、我ながら良い選択でした。

実は最近になって分かったのですが、私は鉛筆や万年筆の書き方が身に染み付いています。そういうこともあって、クラシックセンチュリーを受け入れることが出来なかったのです。

ボールペンというのはボールを使う構造であるため、60-90度近くまで立てて書き込むのに向いています。これはクラシックセンチュリーでも変わりありません。しかし鉛筆や万年筆に慣れた私は、この筆記具を無意識に50度くらいで使っていたのです。

鉛筆/ボールペン/万年筆の書き込み角度やインクの話

その点、ATXは流石でした。流れるような流線形は、オシャレなだけではありません。上記画像のように、自然とボールペンが直角近い角度になります。

当時の私はATXの書きやすさに驚嘆したものです。いや、今日も久しぶりにATXで下書き原稿を作成しましたが、相変わらず書きやすいことに感心させられました。

ATXの場合、形状から大きなボールペンだと錯覚しますが、実は全長138cmに過ぎません。それと私のATXはラッカー塗装なので、殆ど滑らないです。重心バランスも絶妙です。

それならどうしてクロスからモンブランに切り替えたかと言われそうです。これは “替芯(インク)” の問題です。クロスのボールペンでメモを取っていると、事務用ボールペンのように “ダマ” が生じて見苦しかったからです。

一方でモンブランでは、ダマが生じるようなことはありませんでした。それで書き味は互角でしたが、クロスからモンブランへ切り替えたのです。

ちなみに現在ではクロスも改良が進んだようで、ダマが生じるようなことは無くなっています。それからクロスの名誉のために説明しておくと、かつでの “ダマ” は私の方が宜しくなかった可能性があります。

先に説明したように、私は鉛筆や万年筆が中心だったので、筆記具を寝かせて書く習慣が身に付いています。これは下記の三菱鉛筆の説明によると、ダマを発生させる可能性があるとのことです。

[三菱鉛筆] ペンの先にインクが溜まる

そして私の場合、メインの筆記具はYシャツの胸ポケットに投げ込むことが多いです。台所で計量してみたところ、クロスのATXはスターウォーカーと同じ28gでした。筆記具としては、そこそこ重たい部類に属します。

それから何より、ATXは太めの軸です。どうしてもかさばってしまいます。そうかといってリュックサックのポケットに収納すると、冬場は金属なので冷たくなってしまいます。

そんな訳で当時の私は胸ポケットにはマイスターシュテュックを収め、コートやスーツのポケットにはスターウォーカーを忍ばせて仕事したのです。

まとめ(はじめての高級ボールペン)

ATXは立派に高級ボールペンと呼べるもので、ビジネスマンの実用的な仕事道具としてオススメできます。

私としては筆記具としての書きやすさだけで考えると、クロスはアベンチュラが最も高評価です。ATXと似た形状とサイズですが、4gほど軽くて使いやすいです。

しかしクリップ部分の根元部分が、変形には今一つです。コニカルトップも今一つクロスらしくありません。アベンチュラを見ても、クロスだと分かる人は多くないでしょう。

このあたりは当然と言えるかもしれません。クロス自身がアベンチュラを「入門用」と位置付けて販売しています。それに使う側としても、20年近い販売実績を持つボディ(本体軸)の方が安心できます。知名度も高くなります。

そして何はともあれ、ATXはシンプルな割には個性があります。大胆なまでの紡錘形は、鉛筆のように細軸なクラシックセンチュリーとは対照的です。さすがはクロスというところでしょうか。

それでは今回は、この辺で。

——————————
記事作成:四葉静